PLL-VFOを使ったエアバンド受信機の製作
VCOの回路を変更して、高周波増幅・周波数混合部と同じ基板で作り変えました。このコンテンツの最後に改修後を追加しています。(2009-05-26)
改修前
前回の「AVRを使ったエアバンド用PLL-VFOの実験」でテストしたPLL-VFOを使ってエアバンド受信機を作ります。PLL-VFOの回路構成は、実験の結果から、ほぼ確定ですが、その他の高周波増幅、周波数混合、中間周波増幅、検波、低周波増幅の回路構成を決めなければなりません。・・・・・・で、懲りずに、またブレッドボードでテストしてみました。
ノイズが多くて感度も不足気味ですが、こんな状態でも、航空機からの強力な電波は受信できます。・・が、やっぱり安定しません。突然受信できなくなったり、異常発振が始まったりします。ブレッドボードでは当然ですね。^^;
この結果と書籍やWebで得た情報をもとに、高周波増幅と周波数混合は、2SK241を使った回路としました。後段は、以前、「短波ラジオの製作その2(LA1600)」と「短波ラジオの製作その3(LA1600)」で作成した短波ラジオと同じ構成でLA1600で中間周波増幅と検波、TA7368Pで低周波増幅とします。
下が全体の回路図です。ブレッドボードでテストした構成を元に実際に製作しましたが、最終的には高周波と周波数混合をFMフロントエンドICのTA7358Pを使ったものに変更しました。理由は後述します。
PLL-VFO部分の基板実装図です。ご覧のとおりAVRによるPLL制御を行うディジタル回路とアナログ回路のVCOを1枚の基板に同居させています。これは、ブレッドボードで近接していても問題なかったのでやってみました。VCOの回路は、安定度よりも周波数の可変範囲に重点をおいたものなので、ちょっと怪しいです。・・・・おそらく、これが後々の問題になったと思われます。^^;
VCOの出力コイル回りが窮屈です。これは、もともとは使用していなかったのですが、高調波を減らすために後で追加したためです。
その他、高周波増幅と周波数混合基板、中間周波増幅と低周波増幅基板とブロックごとに基板を分割して製作することにします。問題が発生すれば、そのブロックの基板を作りなおせば対処できるはずです。
基盤に部品を実装しました。この時点では、裏面はあまり汚れていませんが、この後に部品交換やパスコンの追加などでゴテゴテになってしまいました。^^;
PLL-VFO単体でテストしました。画像は、PLL-VFOのロックが完全に外れる周波数です。VCOの発振周波数範囲は、トリマで調整可能です。上限が135MHz、下限が105MHz程度になるようにしました。(LCDの表示は、IFの10.7MHzを加算した実際の受信周波数となっています。)
スペアナ・アダプターGigaSt v5を使用してスペクトラムを確認すると、200KHzほどの幅で、小刻みな周波数変動があります。(左画像。ピンクの着色は変動軌跡を示す。)原因はわかりませんが、基板を、机に直接置くと周波数が小刻みに変動するようです。10mmのプラスペーサで基板を机から浮かせるとピタリと安定します。(右画像。微動や裾野の広がりはGigaStの特性です。)
周波数カウンターで発振周波数を測定すると微妙にずれています。最終的には、局発を調整して正確な周波数にあわせ込む必要があります。
ブレッドボードでの実験が厳しい高周波部分を先行して基板作成し、テスト受信してみました。異常発振気味で強い信号受信時にノイズが混じりますが、一応は受信できます。ただ、感度があまりよくありません。「エアバンド受信機の製作」でつくったものと比較すると、かなり劣った状態です。高周波増幅部分は、GigaStのTGモードでテストしても問題ないので周波数混合部分で問題が発生しているようです。感度不足は局発の信号レベルかインピーダンスマッチングが原因かもしれません。
異常発振は、高周波部分ではなく、IF以降で発生しているようです。おそらく基板で作成すれば問題ないと判断して、LA1600とTA7368PのIF基板と第2局発の基板の2枚を作成しました。ところが、発振とノイズは、ブレッドボードでの試作機とまったく同じ状況です。そこで、作成したIF基板に信号発生器から振幅変調した10.7MHzを入力してみると正常に動作し、低周波には、異常発振もノイズも無いことが確認できました。高周波部分かPLL-VFOに問題がありそうです。
問題の切り分けのため、別途FMフロントエンドICのTA7358Pを使用した高周波増幅と周波数混合を別に作成してテストすると受信感度は良くなりましたが、復調された音声にノイズが入り発振したように聞こえます。また、アナログTV放送と思われるイメージ混信が数多く受信できます。
PLL-VFOの代わりに信号発生器からの信号を局発として注入してみるとまったくノイズの無いクリアな受信状況です。
・・・ということで・・・原因は、PLL-VFOにあることがハッキリしました。高調波が悪いのかとVCO出力にFCZコイルによる同調回路を追加してみました。左画像は、同調回路の追加前、左は追加後です。ある程度、高調波を抑えることが出来ましたが、改善の効果は少ないようです。その他、パスコンを追加したり、PLLのループバックフィルタの部品を交換してみたりと悪戦苦闘しました。
下の画像は、左が信号発生器の出力、右がPLL-VFOの出力です。ピンクは変動軌跡を示します。まだまだ、信号発生器比較すると微妙な揺れがありますが、この状況で受信してみるとほぼ満足いく受信状況です。強い信号が入電したときに多少歪んだ感じになりますが、聞いているうちに気にならなくなりました。^^;
細かな変動は、GigaStの局発がゆれていることが原因と思われます。GigaStが悪いのではなく、完全に使用目的から逸脱しているためでしょう。GigaStは、信号純度を見るような用途には向いていません。
結局、受信機と言えどもPLL-VFOからは質の良い信号が必要と言うことです。当然と言えば当然ですが、送信機じゃないのでシビアに考えていなかったことが甘かったようです。
AMラジオICのLA1600は、AGCを内蔵していますが、強力な信号が入電したときにアンプが飽和したような状況が感じられます。やはり高周波部分でもAGCをかけたほうが良さそうです。以前、Webで拝見した6mAM.comさんのフェムト(JP2OMU/酒井さんが設計・製作した6m QRP AMトランシーバー)を改造した回路をそのまま利用させていただきました。
ケースに組み込みました。ケースはタカチのYM-250を使用しました。大きなケースなので収容は余裕があります。以前作成したエアバンド受信機と同じようにプリアンプを内蔵する予定なので、その分のスペースもとってあります。
ケースに組み込んで受信してみると、強い信号を受信したときに受信音が大きく歪んだノイズが混じって聞こえます。PLL-VFOのノイズ対策前と同じような状況です。PLL-VFO基板を固定せずに、立てたりすると正常になります。どうも不安定です。PLL-VFO単体でのテスト時も机に直接置いた場合とスペーサで持ち上げた場合と発振動作の安定度が大きく変化したことに関係がありそうです。PLL-VFOのスペーサを10mmから20mmに変更すると多少の改善が見られました。
近くを航行する航空機からの強力な信号を受信すると音が歪みますが、それ以外はクリアに受信できます。「広帯域プリアンプの製作その2」で作成したプリアンプを外部に接続して受信してみると、管制の地上局も何とか受信でき、感度的には前回製作のものと比較しても問題なさそうです。
やはり、周波数が直読できるのは便利です。特にエアバンドの通信は、比較的短い通話で朝夕の時間帯を除けば頻繁に通信があるわけではないので、あらかじめ特定の周波数にセットして待ち受け受信するのがいいと思われます。
とりあえず完成しましたが、PLL-VFOの出来に満足できませんでした。VCO単体の性能に大きな問題がありそうです。時間が出来たら各部を見直して再度、作成したいと思います。
改修後
エアバンドワッチしていると、やっぱり歪んだようなノイズが気になります。もう少し時間が出来てからじっくりと・・・・・と考えていましたが、VCOだけでも・・・ということで色々と試してみました。
色々なVCOをブレッドボードで試して、良さそうなのをユニバーサル基板に組み立てて特性を見てみます。・・で結局、オーソドックスなコルピッツ発振回路となりました。VCOの発振範囲は、前回と同じように100~130MHzと30MHz程度確保できています。(書籍には、広い可変範囲のVCOは、特性が良くないとの記載がありましたが・・・)
VCOは、PLLの基板から分離することにしました。VCOと高周波増幅・周波数混合部は、同じ基板で問題なかろうと、あらたにユニバーサル基板に実装しました。
PLL回路基板も電源回路を別基板として、新たに作り直すつもりでしたが、完成したVCO基板をつないでテストすると周波数のふらつきも無く良さそうな感じです。PLL回路基板は、古いVCO回路をのせたまま使用することにして、ケースに組み込みました。
受信してみると、強い信号では多少ノイズが混じりますが、改修前と比べればかなり良くなりました。受信感度はそのままで、全体としてノイズレベルが下がったような感じです。ただ、今度は静かになった分、LCDユニットのノイズが聞こえるようになりました。これは、しょうがないのであきらめるしかなさそうです。
LA1600のAGC信号をTA7358PにフィードバックしてAGCをかけるのは、あまり効果が感じられなくなったので外しました。替わりにLA1600のAGC信号をAVRのA/D変換ポートに入力し、信号強度をLCDに表示してシグナルメーターとしました。LCDは、8桁なので四角のキャラクタで8段階のレベル表示となります。
最終的な回路図です。
ループフィルタの構成が間違っていたので訂正します。(2009-07-27)
まだまだ、満足できていません。AGCは、外したのですが、航空機からの強烈な信号と地上局の弱い信号を受信するエアバンド受信機にはAGCが必要と感じています。最終的には、FMフロントエンドICを使用せずに、トランジスタやFETを使ってAGCがきちんとかかる受信機を目指そうと思います。
4件のピンバック
AVRを使ったエアバンド用PLL-VFOの実験 | henteko.org
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