チャージポンプ方式DC-DCコンバーター(5V→9V)の実験
これまで乾電池から昇圧するためのDC-DCコンバータとしてHT7750やMAX751を当サイトでも取り上げてきましたが、これら専用のICは、昇圧するためにインダクタ(コイル)を使用するので、ノイズが多く発生することがわかっています。
昇圧された出力に含まれるノイズに対してはある程度の対策は取れると思いますが、広い範囲の高周波ノイズとして放射されるものは、距離をとるかシールドするなどの対策が必要となり、中波AMラジオや短波ラジオなどの高周波アナログ回路では利用するのが大変になります。
今回、ラジオ同調回路に使用するバリキャップダイオードのドライブ電圧として8~9Vの電圧を得ることを目的に、比較的ノイズの少ないチャージポンプ式のDC-DCコンバータをテストしたので紹介します。
※「チャージポンプ方式DC-DCコンバーター(3V→9V)の実験 」で乾電池2本を想定した3Vからの昇圧を実験しています。(2008-10-15)
LMC555+チャージポンプ方式
パルス信号の発生ICとして広く使われるタイマーICの555を使用した回路です。普通のバイポーラICの555では、最低動作電圧として4.5V程度必要となるので、乾電池からの昇圧には向いていません。今回は、CMOS版の555であるLMC555を使用することで低電圧からの動作を可能としました。
とりあえず、基礎的な実験として、入力電圧を4.8Vとして、チャージポンプ回路で約2倍の電圧を得ることを目標としました。
実験回路図です。タイマーICの555は、2個の抵抗とコンデンサの値により発振周波数とデューティ比を設定できます。今回は、発振周波数50KHz、デューティー比66%を基本としています。
チャージポンプ回路のコンデンサは、低ESRを期待して、積層セラミックコンデンサを使用しています。ダイオードは、できるだけ順方向降下電圧の低いものがよいと思われるので、ショットキーダイオードを使用しました。
負荷として5.6KΩの抵抗をつないだときの、出力電圧と入力電流です。1.5mAの出力電流で、9V弱の電圧を得ることができます。
LMC555の出力するパルス信号と、出力電圧に含まれるリプル成分の波形です。パルス信号の周波数を2KHz程度から660KHz程度まで変化させてみましたが、得られる出力に大きな変化はありませんでした。デューティ比も66%前後をピークとしますが、40%~90%までは大きな変化はありませんでした。出力波形は、細かなノイズはありますが、大きなノイズはありません。
負荷抵抗を変化させたときの一覧表です。目標の9Vを得られるときの負荷電流は最大で0.19mAということになります。大きな出力は無理ですが、効率も最大で80%と高いため実用性はあると思います。CMOS版の555ではなく、バイポーラの555を使用すれば、少し高い出力を得られるかもしれません。
ICL7660(MAX1044)+チャージポンプ方式
+5Vから-5Vの負電圧を得るために購入してあったスイッチドキャパシタ電圧コンバータICのICL7660を使用した回路です。ICL7660のデータシートには、倍電圧回路(Voltege Doubler)としてチャージポンプ式の回路例が示されています。また、ICL7660は、最低動作電圧が1.5Vと低いので乾電池動作も問題ありません。
実験回路図です。データシートの回路例そのものです。さすが、専用ICだけあって、上のLMC555を使用した回路と比べるとスッキリとしています。IC周辺には、まったく部品の必要がありません。
LMC555と同じく負荷として5.6KΩの抵抗を接続したときの出力電圧と入力電流です。LMC555よりも効率が良いようです。
ICL7660の出力するパルス信号と、出力リプルの波形です。パルス信号の周波数は、約3.6KHzとなっています。なお、ICL7660の発振周波数は、電源電圧によって変化するようです。出力には、同じ周期でリプルが出力されますが、この程度ならローパスフィルタで除去できると思います。
負荷の抵抗を変化させたときの一覧表です。LMC555と比較すると、さすがに専用ICだけあって、効率が高いことがわかります。電圧は多少低くはなりますが、出力電流10mA程度までは、十分使えそうです。
ノイズの影響
DC-DCコンバータ回路が発生する放射ノイズを確認するため、「短波ラジオの製作その3(LA1600)」で製作した短波ラジオを近づけてみました。ICL7660とLMC555双方とも、発振するパルス信号の影響と思われる弱いノイズがところどころに入感しますが、放送の受信にはまったく影響がありません。ラジオの電源として実用可能だと思います。
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