RFツートーンジェネレーターの試作

 RFのツートーンジェネレーターがあればトランシーバーをつながなくても簡単に3次相互変調歪み(IM3 )が測定できるのでリニアアンプ等の性能を確認できます。RFのツートーンジェネレーターについては、si5351aを使用すれば簡単に2信号を出力できることはわかっていましたが、同じチップから同時に出力するとスプリアスが多くなって実用的ではないと思っていました。しかし、いつも参考にさせていただいているJA2NKDさんのサイトでは、きれいな2信号を出力できており実用性も十分です。
 また、これまで高周波を合成するコンバイナは、抵抗をスター型に繋いだものを簡易的に使用してきましたが、これでは合成に伴う相互変調ひずみが大きくアンプの評価を行うことは困難です。コンバイナもこのサイトとトロ活の6dBハイブリッド・コンバイナを参考に作成してみました。

 si5351aツートーンジェネレーターの回路図です。マイコンはsi5351aの制御のみの単純な動作なのでAVRのATTiny85を使用しました。CLK2から出力する基本信号をロータリエンコーダーで可変式として、それよりも低い周波数差分の信号をCLK1から同時出力します。周波数差分は20kHzをデフォルトとして0Hzから1MHzまでの可変式としました。

 ベタ基板にランド工法で実装して、コンバイナを繋いで合成された信号をスペアナで見てみました。

 7MHzです(以下、si5351aからフィルターなしの信号で測定しています)。2信号は基本信号とそれよりも20kHz低い周波数の信号としています。残念ながら手持ちのスペアナ(RIGOL DSA815-TG)の性能では、このような狭帯域の測定が十分にできません。APB-3で測定するとIM3は80dBcとなりました。なお、APB-3は-10dBm以上の2信号を入れた場合は内部相互変調によりIMDが大きく悪化します。このためAPB-3の入力に10dBのアッテネーターを入れて測定しています。

 28MHzです。スペアナでもぎりぎりIM3が見えていますが、念のためAPB-3で測定するとIM3は62dBcとなりました。

 50MHzでは、IM3が50dBcとなりました。リニアアンプのIM3を30dBcを目標とすれば使えないことはありませんが残念な結果です。

 標準信号発生器(HP8657D)と自作のsi5351aを使用したシグナルジェネレーターを信号源として、ハイブリッド・コンバイナで合成してみました。50MHzでもIM3は60dBc程度は確保できます。(±100kHz付近の信号は自作のシグナルジェネレーターで使用するACアダプタの出すノイズです。)

 2台の信号源を使用すれば144MHzでもIM3は60dBc近く確保できます。

 si5351aによる2信号発生はHF帯なら問題ありませんが、30MHz帯以上は部品の実装から考えないと十分な性能を得ることは難しいと考えます。さらに高調波の問題もあるのでリニアアンプなどの評価に利用するにはLPFやBPFを準備する必要もあります。一方で、ハイブリッド・コンバイナは、十分な性能がありました。2台の信号発生源を用意できるのであればこれを使用する方法が簡単で確実です。