LDMOS-FETを使ったリニアアンプの試作
28MHz-AMトランシーバーや50MHz-AMトランシーバーで使う予定で、秋月電子でNXP製のLDMOS-FETのAFT05MS004NT1を購入しました。パッケージがSOT-89なので放熱に苦労します。aitendoで購入したSOT-89用の変換基板を使ってテストしました。この変換基板は、放熱対策がしっかりとしているのですが、2.54ミリピッチのランドが両面にあるので、大きな放熱板にべったりと固定することができません。中途半端に放熱板に固定してテストしていたところ、2個を飛ばしてしまいました(原因は熱以外と思われますが、詳細は不明です)。
トランシーバーの終段増幅はRD06HVF1やRD15HVF1を使用して完成させたのですが、ちゃんとした基板を作ってAFT05MS004Nをテストすることにします。回路は、RD06HVF1やRD15HVF1を使用したものとほぼ同じです。基板は、PCBEで表面実装タイプで設計しました。
基板をCNCフライス盤で加工しました。FETの放熱は基板のグランド面だけでは不足すると思われます。両面基板でビアをたくさん打って熱伝導率を上げる方法もありますが、基板製作を外注する必要があります。JA2GQPさんのサイトでは、同じSOT-89のRQA0009の放熱を工夫されています。JA2GQPさんがSOT-89用に作られた変換基板をヒントにして、FET近くにネジを入れて、そのネジで放熱板に熱を伝える方法を採用しました。ネジは、熱伝導率の大きな銅製が一番良いのですが入手が困難です。アルミでも鉄の3~4倍程度は熱伝導率が良いので、手持ちのアルミネジを使ってみました(ラジコン用)。下右画像のピンクのネジがそれにあたります。ネジの場所は、FETの近くの2か所としてシリコングリスを塗って基板と放熱板をしっかりと固定ました。アルミネジはアルマイト加工されていますが、影響がどの程度あるわかりません。テストしてみると、うまく熱が伝わり、放熱板が熱くなることが確認できました。
AFT05MS004Nは、HF帯でかなりパワフルです。10MHzでは、5dBm入力で5Wを超えます。8dBmを入力すると10Wを超えました。効率も60%を余裕で超えます。心配していた放熱も5W出力で5分の連続送信でも問題ありません。放熱板は、かなり熱くなりますが、チップの表面は、指で触ってもやけどするほどではありません。出力の変化も見られません。普通にトランシーバーの終段として利用できそうです。
電源電圧を13.0Vとして、10MHz、30MHz、50MHzの入出力特性を測定してみました。アイドリング電流は100mAです。10W近くまで直線性があります。短波帯は10dBm(1mW)入力で10Wを超えます。ゲインは30dB近くあります。50MHzでも14dBm入力で10Wを超えました。
RFツートンジェネレーターで、50MHzのツートーンを入力して。IM3が-30dB以上確保できるときのパワーは約30dBmでした。リニアアンプに使うなら最大でも5W以下が安心できるところでしょうか。
その後、28MHz-AMトランシーバーの終段増幅部をRD06HVF1を使用したものから今回のものに交換してみました。はじめは入力アッテネーターを3dBとしていたのですが、これで3個のAFT05MS004Nを飛ばしました。無変調でのプリドライバ出力が13dBm以上あり、この状態で変調がかかると一瞬で飛んでしまうようです。出力が出なくなってからチップを触っても熱くないのでわかりませんでした。はじめは寄生発振を疑ってゲート抵抗等を交換してみたのですが解決しませんでした。入力アッテネーターを10dBとしてOKとなりました。
これまで合計5個のAFT05MS004Nを飛ばしています。1個170円なので金額的には大きな負担にはならないのですが、チップの交換が面倒です。SOT-89は半田コテでは外せないので、小型ガストーチ(ライター)であぶって外しています。
2022-11-06
別のトランシーバーに使用するため同じものをもう一台作りました。SGから14dBmを加えて40dBm(10W)の出力を試しましたが、20秒ほどで出力が出なくなりました。飛んでしまったようです。データシートでは、入力0.1W(20dBm)以上のデータもありますが電源電圧7.5Vのものです。電源電圧13.8Vで使用する場合は、入力は10dBmまでとした方が良さそうです。10dBm入力ならHF帯から50MHzまで出力37dBm(5W)前後で安定しています。
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ブレッドボードで28MHz-QRP-AMトランシーバーの製作 | henteko.org
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