移動用のV型ダイポールアンテナの製作
移動運用で使用するダイポールアンテナを作成します。狭い場所でも利用できるようにローディングコイルを使用した短縮型のダイポールアンテナとします。
最初にバランを作成しました。50MHz用のV型ダイポールアンテナで使用したバランと同じく強制バランとします。フェライトコアFT114-43に同軸ケーブル1.5D-2VとAWG24のテフロン線(PTFE線)を使用して強制バランを作成しました。トロ活によると巻線に同軸ケーブルを使用した場合は、同軸ケーブルの発熱に注意するように書かれています。1.5D-2V自体はHF帯なら100Wでも問題ないのですが発熱の影響を考えると100Wの運用は厳しいかもしれません。ただ、このアンテナは移動運用で使用するので最大でも50Wまでとなります。このため特段の問題はないと考えます。
バラン自体のSWRを低くするコツは、同軸コネクタとの接続をできる限り短くすることと、アンテナ端子への分岐した部分をできるだけ短くすることです。ケースに入れる前の巻き線の先端に50Ωの抵抗をつないだ状態ではSWRは50MHzで1.1以下だったのですが、完成したバランのアンテナ端子に50Ωの抵抗を接続してSWRを測定すると51MHzで約1.2と若干の悪化が見られます。
エレメントやバランはポリエチレンのまな板(ホームセンターで400円程度)を半分にしたものを使用して固定します。エレメントはキャップをした13mmの塩ビパイプを専用の樹脂サドルを使用して固定します。キャップの中心にエレメント固定用のM4ネジ20mmを取り付けて内部からバランへの配線を取り出しています。バラン自体はVU40の専用樹脂サドルで固定します。
エレメントは多少でも放射効率が良くなるようにセンターローディングとします。ベース側はアルミパイプ、トップ側は1.4mのロッドアンテナを使用します。ベース側のエレメントは、400mmのアルミパイプ(外径8mm内径5mm)の両端にM6からM4へのインサートナットを埋め込みます。M6の下穴は5mmなので、そのままM6でタップを切ってネジロック剤を使用してインサートナットを埋め込みました。なお、インサートナットは長さ12mmを使用したのですが、アルミパイプの固定が難しくタップを切るのは結構大変でした。もう少し短いインサートナットが良いかもしれません。
ローディングコイルは、13mmの塩ビパイプと専用キャップを使用して作成します。ゲルマラジオの試作工房さんのサイトを参考にコイルの巻き数を計算しました。コイルは塩ビパイプに密巻きとして両端はキャップのM4ネジに内部で接続します。初めは0.8mmのUEWで作成したのですがコイル自体が重くなるのと巻き線部分が長くなるので0.6mmのUEWに変更しました。
コイルは途中で巻き数を増やすのは大変なので多く巻いてから減らす方向で調整します。7MHz用は130回巻として60uHとしましたが残念ながら計算通りにはいきません。おそらくエレメントの直径が不確定要素となり計算から大きくずれていくのだと思われます。NanoVNAで同調周波数がわかれば、そこから逆算する形でエレメントの直径を求めて、あらためて必要インダクタンスを求めるという手法でコイルの巻き数を調整しました。ロッドアンテナの長さも調整しつつ最終的には75回巻の37.7uHとしました。
7MHzに同調させた状態でのロッドアンテナの長さは1.2mとなりました。アンテナの高さやロケーションによっては、同調点をロッドアンテナで調整する必要があるので最大長の1.4mとならないように注意しました。
7MHzに同調した状態でインピーダンスが低いことが気になります。給電点の高さの影響もあるかもしれませんがV型の角度が90度なので50Ωよりも低くなっているかもしれません。理論的に50Ωとなるように120度に変更しました。14MHzと21MHz用のローディングコイルも作成しました。
14MHzのローディングコイルでは、ロッドアンテナの長さを調整することで18MHzにも同調させることができます。
21MHzのローディングコイルでは、ロッドアンテナの長さを調整して24MHzと28MHzに同調させることができました。ただ、低い周波数に対応したローディングコイルで高い周波数に同調させるには、当然ながらロッドアンテナを短くする必要があります。効率的にはロッドアンテナは長いほうが有利なので本来なら各バンド毎の専用コイルを準備したほうが良い結果が得られるはずです。
ローディングコイルとベース側エレメントを使用せずにロッドアンテナ直接つないで長さを1.3m程度とすれば50MHzのフルサイズのダイポールアンテナとなります。ロッドアンテナを40cm程度とすれば144MHzにも同調しますが使えるかどうかはわかりません。
アンテナを2階のベランダから水平に突き出した状態で7MHzのFT8で50Wで数局とQSOしてみましたがローディングコイルやバランに特段の発熱はありませんでした(100Wは怖くて試していません)。
7MHzはSWR1.5以下の帯域が20kHz程度しかないためアンテナの高さやエレメント周辺の環境で同調点が大きく移動します。また、希望周波数で同調が取れていてもSWRが下がらない場合があります。こういった場合は高さを変えるかインピーダンスが容量性なのか誘導性なのかをNanoVNAやアンテナアナライザー等で確認してバランとエレメントの接続部分にマッチング用のコンデンサやコイルを追加する必要があります。インピーダンスを測定することができれば問題ないのですがSWRメーターだけでは調整に手間取ることが予想されます。なお、21MHz以上であれば帯域も200kHz以上あるので7MHzよりは調整は簡単でした。