ポータブルDSPラジオの製作
aitendoのDSPラジオモジュールM6955を使用したラジオを作成してから8年以上たちます。この間、毎日数時間(我が家は朝昼晩の食事時はラジオを聞きます)使用してきました。AFボリュームが一度故障したのみで、それ以外は故障もなく安定して動作しています。
同じM6955モジュールを使用したポータブルタイプのラジオを新たに作ることにしました。前回もFM・SWアンテナの入力にJ310のGGアンプをプリアンプとしたのですが、今回も同じ構成とします。ブレッドボードの環境でスペアナを使ってGGアンプの利得を確認してみました。短波帯は3dB~7dB程度の利得があります。FM放送の80MHz前後も2~4dB程度は利得がありました。十分ですね。
回路図です。M6955やLCDはAVRで制御します。これらは3.3V動作ですが、プリアンプは3.3Vでは利得が稼げません。プリアンプだけは5Vで動作させます。まれにM6955とのI2Cがうまくいかないことがありました(LCDは問題なし)。オシロスコープで確認するとLOが下がりきらないようです。I2Cラインをプルアップするのではなく100kΩの抵抗でグランドに落とすとM6955も安定して動作します。前回はAFアンプにLM386を使用したのですが、今回はM6955の内蔵アンプで音を鳴らします。ポータブルラジオとしては十分な音量です。
基板はPCBEで設計して、CNCフライス盤で加工しました。
部品を実装して動作確認しました。電源はaitendoで大電流出力充放電モジュール (M5V2000A)を購入しました。リチウムイオン電池の充放電制御が可能なIP5306が搭載されたモジュールです。AMラジオを聴いているときの消費電流は60~70mAとなります。2000mAのリチウムイオン電池18650で1日以上利用できる計算です。モジュールの入力電流は実測で100mA前後でした。ということで、2000mAのリチウムイオン電池では1日はムリです。
ケースはいつもの秋月電子のプラケース(大)です。中波ラジオ放送のバーアンテナは、はじめ小型のものを使用したのですが、受信感度が今一つなので少し大きなものに変更しました。電源モジュールはLEDで電池残量表示があります。便利なのですが輝度が高すぎてまぶしいです。
アンテナはBNCコネクタにロッドアンテナを取り付けました。FM放送や短波放送はアンテナを伸ばして受信します。以前作成したDSPラジオと受信比較してみました。AM放送は、アンテナが同じなのでほぼ同じ受信感度です。短波やFM放送は、やや受信感度が悪いことがわかりました。プリアンプの基板設計が悪いかもしれません。
プリアンプの交換
以前作成したものと比較してFM放送と短波帯の受信感度が良くありません。プリアンプの基板パターンが悪いのでしょう。プリアンプを別基板とするついでに、GGアンプよりも利得の稼げるソース接地とした広帯域アンプに交換することにしました。基板は、CNCフライス盤で加工しました。
手持ちがたくさんある2SK241で作ってスペアナで特性を見てみました。J310のGGアンプよりも広帯域で利得があります。試しに2SK439(手持ちは最後の1個)に交換して特性を見てみると、さらに利得を稼ぐことができます。実際に使用するロッドアンテナをつけてFM放送の信号強度をスペアナで見てみましたが、明らかに2SK439のほうが利得がありました。
2SK241と2SK544の手持ちがあるので、この先、高周波用のFETを購入することはないだろうと思っていましたが、思い切って2SK439を購入しました。2SK241は、価格高騰していますが、2SK439は比較的リーズナブルです。
DSPラジオに組み込んでみました。これまでよりは受信感度は上がっています。夜間の短波帯も特段の問題はなさそうです。
ラジオを聴いていると突然、電源が落ちるようになりました。プリアンプを交換してからです。いろいろ試していると音量を絞っていると電源OFFとなります。音量をあげて受信している場合は、問題なく動作します。また、音量を絞った状態で電源を入れると30秒ほどで自動的にOFFとなります。電源モジュールで使用しているIP5306のデータシートを見てみました。負荷電流が45mA以下だと32秒で負荷なしと判断するようです。実際に消費電流を測定してみると通常の音量で45mA前後でした。最初のJ310のGGアンプは、ブレッドボードでの単体テストで電流が25mA程度流れていましたが、2SK439の広帯域アンプは7mA程度です。プリアンプの消費電流が少なくなったことで、IP5306が負荷なしと判断して電源OFFしていました。
安定して動作させるためには、あと10mA程度は電流を消費する必要があります。抵抗で熱に変えることも考えましたが、限られた電池のエネルギーを有効に使うために、プリアンプに大きな利得が得られるMMICを使用してさらに高感度にすることにします。
MMICは、古いものですが手持ちのTA4002Fを使用します。基板はCNCフライス盤で加工しました。
TA4002Fは、1GHzまで使えるものなので、短波帯からVHFまではフラットに20dBの利得があります。DSPラジオに組み込んで受信してみましたが、20dBはかなりの効果があります。特にFM放送は、受信性能がかなり上がりました。室内でロッドアンテナで受信すると、聞こえないか、聞こえてもノイズに埋もれるような局ばかりでしたが、ほとんどの局がクリアに受信できます。短波帯は少しオーバーゲインかもしれませんが問題なく使えました。
プリアンプ単体の消費電流は実測で15mAでした。トータルでは、通常の音量で実測50mA程度なので、自動的に電源OFFとなることはなくなりました。
2022-06-18
ミキサーICのSA612Aとsi5351aを使用したVFOによるダウンコンバーターを作成して、エアバンドが受信できるようにしました。ちょっとノイズが多いのですが、高感度で受信できます。
AVRのプログラムです。Microchip studio(Version 7.0.2542)にCコンパイラはXC8(Version 2.31)を使用しています。I2Cのライブラリは、Tiny用ならどれでもOKです。Githubで公開されているTinyI2CMasterを使用させていただきました。
M6955の制御は前回のDSPラジオ製作とほぼ同じですが、AF出力は、スピーカーを直接接続するので、レジスタ6の出力位相に注意が必要です。このレジスタを正しく設定せずにスピーカーをつなぐと過大な電流が流れてチップ(AKC6955)が故障する可能性があります。また、短波バンドは13分割されていますが、適当なバンドを選んでおけば3.2~21.9MHzまで普通に受信できます。
バンド切換スイッチと短波のステップ切替スイッチは、AVRのポートが不足するのでADCによる読み出しとしました。ステップ切替スイッチを長押しすると、その時の周波数を各バンド毎に保存して、次に電源を入れた時にその時のバンドで立ち上がります。
AVRに書き込めるバイナリーファイルの要求が数件あったのでここに載せておきます。
※printfで浮動小数点表示ができない場合は、コンパイル時にわけのわからんエラーメッセージが大量に出ることがあります。この場合はこちらを参考にMicrochip Studioをダウングレードする必要があります。